沖縄の公立大学 名桜大学(沖縄県名護市)

研究コラム(つながる、つなげる教員の輪)研究

星空と観光と地域と

卯田 卓矢/国際学群 観光産業教育研究学系/掲載日:2020年3月

星空と観光と地域と

卯田卓矢(国際学群観光産業教育研究学系 准教授)

 夜空に輝く満天の星空―。近年、日本各地で「星空」を活用した観光振興が活発化しています。たとえば、長野県阿智村ではスキー場の山頂を舞台とした「天空の楽園・日本一の星空ナイトツアー」があり、毎年多くの観光客が訪れています。また、鳥取県は2017年から「星取県」プロジェクトを開始し、星空観望ツアーや鳥取砂丘星空ヨガ、コラボ商品の企画などを全県的に進めています。では、なぜ星空が観光資源になり得るのでしょうか。それは日本、特に都市部の夜空は明るく、星を十分に観望できないからです。つまり、星空観望は都市住民にとって「非日常的な体験」=観光となるのです。

 私は昨年、石垣島の星空観光を調査しました。沖縄本島(北部)や離島では最近星空に注目した取り組みが進められつつあります。ただ、それらは事業者個々による「点的」な活動が中心です。一方、石垣島は行政や事業者、天文愛好家などが連携し、全島的(いわば「面的」)な活動が行われています。こうした石垣島の星空観光の発展にはいくつかの要因がありますが、その中で「星空の価値化とその共有」という側面は重要です。石垣島では2001年から「南の島の星まつり」が開催され、このイベントの成功をきっかけに「星は特産物」との認識が島全体に広まりました。星空のような身近で、一見すると価値がないようなモノを観光資源化するには、それが「価値がある」と認識されること、またその価値が広く共有されることが必要です。その点において、星まつりは石垣島の「面的」な星空観光の土台を形作ったイベントといえます。先の本島や離島の「点的」な取り組みをさらに「面的」に拡大・発展させる際、この「星空の価値化とその共有」という観点は重要な示唆を与えてくれるのではないでしょうか。とはいえ、まずは夜空を見上げてみましょう。

uda2019_01.jpgバンナ公園の展望台。夜になると満点の星空を観望できる

uda2019.jpg卯田卓矢(国際学群観光産業教育研究学系 准教授)
滋賀県出身。専門は観光地理学、文化地理学です。研究関心は文化遺産観光と地域振興、過疎地域における文化継承のあり方などです。趣味は「趣味を探すこと」と言えるほどの無趣味ですが、強いて挙げるとすれば音楽鑑賞です。最近はAphex Twinを聴き直しています。

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