沖縄の公立大学 名桜大学(沖縄県名護市)

研究コラム(つながる、つなげる教員の輪)研究

『平家物語』の形成過程を探る

小番 達/国際学群 国際文化教育研究学系/掲載日:2016年11月

『平家物語』の形成過程を探る

小番 達(国際学群 国際文化教育研究学系 上級准教授)

 私の専門は日本中世文学、とくに軍記物語、なかでも「祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり......」ではじまる『平家物語』の研究です。『平家物語』は『源氏物語』と並んで日本を代表する古典文学の一つです。ほぼ全ての学校教科書に収載されていますので、上に引いた冒頭部分も含め、「木曾最期」や「那須与一」などの一節を読んだ方も多いはずです。 さて、この『平家物語』の特徴として、「諸本」(「異本」とも。バージョンの異なるテキストのこと)の数が極めて多いことがあげられます。いくつもの『平家物語』が存在 しているわけです。『平家物語』のもう一つの特徴、あるいは謎とも言えるのが、有名な作品にも関わらず、その成立事情が明確でないことです。いつ、誰が物語を書いたのかということがわかっていません。
 こういった特徴をもつ『平家物語』ですが、私は、多くの異本の中で延慶本(えんきょうぼん)と呼ばれる『平家物語』を主な対象として、このテキストの本文の形成過程の解明に取り組んでいます。延慶本はその奥書から延慶2、3(1309、10)年に書写、さらにそれを応永26、27(1419、20)年に書写したもので、最も古い形態を残しているテキストとされてきました(国の重要文化財に指定)。物語外部に存在する文学作品や史料など、そして他の諸本との交渉関係の分析から延慶本の本文がどのように作成(創作、編集)され、さらにそれがいつごろ、どこで、どのような意図をもって行われたのかという物語の成立に関わる問題を明らかにしたいと考えています。
 『平家物語』研究は近世以来連綿と続いています。先学による厖大な研究成果があるわけですが、未だに取り組むべき課題、論ずべき話柄はそこここに存在します。物語の成立・形成問題もまた然り。今後も精進して研究を続けてゆきます。


延慶本平家物語冒頭     

2016年11月

小番 達(こつがい とおる)(国際学群 国際文化教育研究学系 上級准教授)
 1967年、秋田県に生まれる。学部生時代はスキーやスクーバダイビング、ツーリング等々と遊んでばかり、否、趣味は多い方だったが、現在は趣味と呼べるものは皆無に近い状態。あえて言えば、「牛に引かれて善光寺参り」ならぬ「嫁に引かれてカフェ廻り」ぐらいか。

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