沖縄の公立大学 名桜大学(沖縄県名護市)

研究コラム(つながる、つなげる教員の輪)研究

沖縄発ゴロゴロの憲法学

大城 渡/国際学群 経営情報教育研究学系/掲載日:2013年4月

沖縄発ゴロゴロの憲法学

大城渡(国際学群 経営情報教育研究学系 准教授)

 学生時代に拝聴した、私の憲法学の師がふと漏らした言葉が、今も強烈に印象に残っている。
  「大城君、沖縄には憲法問題がゴロゴロしているよ。」
 当時の私は、この「ゴロゴロ」の感覚が分かっていたようで、今にして思えば実はまだよく分かっていなかった。そのことに気付いたのは、県外の大学院に進学して、県外から沖縄を見つめる機会を得て、憲法学を考究するようになってから。
 現行憲法が国民に等しく保障しているはずの平和・人権(自由)・自治の価値、古今の沖縄の歴史等、何れの観点から見ても、基地問題を始め、沖縄では憲法問題の一つ一つが重く、しかも数が多い。また、沖縄では、平和・人権(自由)・自治の価値を侵害し、多くの憲法問題をもたらしてきた、剥(む)き出しの国家権力を最も痛烈に感じる。そのような国家権力を前にして、憲法学研究を志した私の初心の強靭度が常に厳しく試されているような気もする。
 私自身も、沖縄では"年中行事"と称されていながら、本当は深刻な憲法問題としてこれまでは認識されてこなかった「ゴロゴロ」の一つ-不発弾処理-と思いがけず近年向き合うこととなった。沖縄戦終結から既に60年経過しているが、今の処理ペースではその完全処理までなお60年以上もかかるという。住民が不発弾に苛(さいな)まれることがないだけの「平和」の実現さえいかに大変かが明白である。沖縄戦に由来する不発弾の爆発によって現に重傷者も出し(2009年)、今もなお依然としてゴロゴロ存在する不発弾によって住民が死傷する危険が続く限り、そもそも沖縄戦が「終結」したという評価さえ何やら怪しくなってくる。
  「平和」「自由」「進歩」を建学の精神とする名桜大学で、学生たちとともに、沖縄の平和・人権(自由)・自治を確立していくために、やるべきことや、全力で向き合うべき研究課題はゴロゴロある。

2013年4月

大城 渡(国際学群 経営情報教育研究学系 准教授)
 1970年生まれ。沖縄県豊見城市出身。国際学群准教授。専門は公法学(憲法・行政法)。沖縄にはゴロゴロ存在する憲法問題に(微力ながらも飽くことなく)奮闘中。他方で、片付けられない自分の研究室の整理整頓には(半ば諦めているところもあるが)苦闘中。家庭では"イクメン"には程遠いですが、育児休業もただいま経験中!
 なお、本コラムで言及した不発弾処理(行政)の詳細については、拙稿「不発弾処理行政の構造と法的課題」(名桜大学総合研究所紀要第18号、2011年)を参照されたい。

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