沖縄の公立大学 名桜大学(沖縄県名護市)やんばるの豊かな自然の中で国際的教養人を育成します!

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平成30年度名桜大学卒業式・大学院修了式 学長式辞

掲載日:2019年4月15日学長室から

 平成30年度の学部卒業生、助産学専攻修了生及び大学院修了生の皆さん、ご卒業・修了、おめでとうございます。本日、名桜大学を卒業する学部学生450名、助産学専攻修了生6名、そして大学院生修了生16名の皆さんと、ご家族、関係者の皆様に心よりのお慶びを申し上げます。本日は、ある意味では、学部卒業生の保護者の皆様の「卒業式」でもあります。いま、自立して社会に一歩を踏み出そうとする凛々しい卒業生を見ていて、これまでのご苦労が報われたとお感じになっておられるのではないかと推察いたしております。あらためてお祝いを申し上げます。

 本日は、また、公務ご多用にもかかわらず、卒業式にご臨席賜りました本学の設立団体であります北部広域市町村圏事務組合理事長の渡具知武豊名護市長をはじめ、北部12市町村の市町村長の皆様、議会議長および議員の皆様、そしてご来賓の皆様に名桜大学学長として厚く御礼を申し上げます。

 さて、平成30年度はこれまでにない自然現象とそれにともなう災害が連続して発生しました。台風24号などの大型台風の多発、集中豪雨、洪水、地震が連続して起こり、一つの災害から回復する間もなく、次々と大きな自然災害が日本列島を襲いました。これは日本列島だけの出来事であろうかとあらためて世界を眺めてみますと、じつは21世紀前半の18年は、このようなことが世界的な現象になっていることに気づきます。去年は、超大型ハリケーン「フローレンス」がアメリカ東海岸に上陸し、150万人に避難命令が出ました。CNNニュースを見ていますと、避難する人々の車がハイウェイに数珠繋ぎになっていて、まるでパニック映画の1シーンを見ているようでありました。

 また、去年の夏は、カリフォルニア州で森林火災が広範囲で発生し、森に囲まれたパラダイスという美しい町が炎上、新聞には"Paradise on Fire!"(パラダイス炎上!)という見出しが出ました。人類にとっての「パラダイス」、「楽園」とは、ここ、この地球という惑星であります。それが炎上しているというニュアンスがこの見出しには読み取れるような気がします。

 シベリアの森林は亜寒帯にありますが、去年はシベリア史上最も激しい森林火災が発生しました。ロシアの科学者たちは、シベリアの森林火災は地球温暖化が原因であると分析しています。大規模森林火災は、さまざまな原因で発生すると言われていますが、やはり科学者たちが指摘するように、地球温暖化が加速されてきているのでしょうか。2015年以降、温暖化の影響で、アメリカでは「45兆円の被害」(『朝日デジタル』)が出ていると報じられています。

 諸橋『大漢和辞典』で「災」という字を引いてみますと、上の3つの小さい「く」の部分は川の流れ、または水害を表し、部首は火による災害を意味するのだと説明しています。まさに、2018年は、地球の広大な森林が燃え、洪水が地上を覆った年でありました。20世紀のアメリカのパニック映画といえば、宇宙の彼方からエイリアンが襲ってくる映画が多かったのですが、21世紀には大規模な火災や洪水、そしてスーパーハリケーンが襲ってくる映画が増えてきています。

 ウェンデル・ベリー(Wendell Berry)というアメリカの詩人が、「私たちは火を買うために世界を売る / 私たちが進む道を照らしているのは燃える人間たち」と詩に書いています。わかりやすい英語で書かれていますので、原文を読んでみましょう。
 We sell the world to buy fire(私たちは火を買うために世界を売る)
 Our ways lighted by burning men(私たちが進む道を照らしているのは燃える人間たち)
この場合の「火」は「エネルギー」、「燃料」、あるいは「原発」などの「最先端の文明」の象徴であると言ってもいいでしょう。"Sell"<「売る」>という言葉には、日本語でもそうですが、「裏切る」という意味もあります。ベリーの詩は、人間は人間を育ててくれた地球を「裏切っている」という意味にも解釈できます。皮肉なことに、文明が進んでいるように見えながら、じつはそれは人間自身が燃える状況をもたらしている、人間の自己破壊をともなうものであるということを、ベリーはその詩で示唆しているのです。福島第一原子力発電所の事故が発生したのは2011年3月のことでした。まさに「火」や「光」を手に入れようとして、この8年間、私たちは大きな犠牲を払ってきています。

 科学者たちは、人類が新しい時代、これまでにない地球環境に直面していると主張しています。例えば、オゾンホールの研究で1995年にノーベル化学賞を受賞したオランダの化学者パウル・クルッツェンは、新しい地質時代区分を示す「人新世」(アントロポセン、Anthropocene)という概念を提唱しました。これは簡単に言えば、「人類の時代」を意味する言葉です。要するに、人類の活動が地球に甚大な変化をもたらしている、20世紀後半から21世紀にかけての気候変動の凄まじさを見たら、人間は新しい生き方をしないといけないのではないか、ということをクルッツェンは提唱しているのです。昨年、日本で連続した災害は、これまで日本人が伝統的に作り上げてきた自然(つまり地球)との関係、日本文化、日本の文明のありようについて、このままで良いのだろうかと問いかけているように思えます。ヨーロッパでは、地球温暖化に危機感を持ち、政府や大人の無策を批判する若者数万人が参加して、「将来のための金曜日(Fridays for Future)」と呼ばれるデモが毎週金曜日に行われています。これは世界的な広がりを見せていて、日本でも先週、3月15日の金曜日に若者たちのデモが行われました。

 世界の姿はどのようなレンズを通して見るかによって変わってきます。これまで私は、気候変動や地球環境という視点から話をしました。それは私たちが直面している世界の一つの姿です。そして21世紀になってよりはっきりと見ることができるようになった世界の姿でもあります。

 いつの時代においても、困難に果敢に挑戦し、世界に希望をもたらすのは皆さんのような青年男女、若い人たちです。賛否両論がありましたが、最近の県民投票を牽引したのは沖縄の若者たちでありました。名桜大学は、学生が生涯をとおして学び続ける力を獲得することを、教育の究極の目標としています。私たちは生涯をとおして自らを教育し、新しい自分と出会い続けます。本日、本学を卒業していく皆さんがどこにいようと、どのような職業についていようと、自らを磨き続けることをやめるわけにはいきません。この4年間、名桜大学で身につけた論理的・批判的思考力、自立し、自らを律しながら課題に取り組む力、新しい世界に踏み込んで行くチャレンジ精神、他者と力を合わせて目標を達成することができる人間力は、皆さんの人生をしっかりと支え続けていくことでしょう。

 21世紀は皆さんの時代です。ときには圧倒するような力が襲来することもあるでしょう。しかし、本日卒業していく皆さんが、粘り強く、心の声に耳を傾けつつ、自らの志を大事にして、自立した個人として成功することを祈っています。卒業生の一人一人がその若い力で困難に挑戦し、21世紀の新しい文化と社会を創造するために躍動することを21世紀の世界は期待しています。皆さんと、皆さんの同世代の青年男女こそが、世界の希望なのであります。本日、名桜大学を卒業・修了していく皆さんが、心身ともに健康で幸福な人生を過ごされることを願って、学位記授与式の式辞といたします。卒業、修了、まことにおめでとうございます。

平成31年3月20日 名桜大学学長 山里勝己

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