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国際コンソーシアム協定連携シンポジウム[沖縄の健康長寿復活」を開催

掲載日:2018年12月19日お知らせ , 卒業生向け , 受験生向け , 在学生向け , 地域の方向け

国際コンソーシアム協定連携シンポジウム[沖縄の健康長寿復活」を開催
かつて健康長寿世界一であった「やんばるの地」で健康長寿に向けた今後の取り組みについて考える

 平成30年11月3日(土)に名桜大学にて国際コンソーシアム協定連携シンポジウムが開催されました(主催:名桜大学、北部振興会)。
このシンポジウムは、沖縄県が直面している健康問題、課題について様々な視点から考え、かつて平均寿命世界一であった「やんばるの地」でシンポジウムを開催することにより、「やんばるの健康長寿世界一」復活のキックオフと位置づけられました。また、北部地域が一丸となって取り組む健康づくりプロジェクトを発足させるために北部12市町村の首長による「やんばる健康宣言」が行われました。
 開会にあたり、山里勝己学長は「本シンポジウムを北部地域で開催することに深い意味があると考えています。本シンポジウムが歴史に残る、真に生産的で意義深いものとなることを願っています」と挨拶を述べました。

Ⅰ部 基調報告
 第Ⅰ部の基調報告は本学多目的ホールで行われ、5人の報告者が、健康問題に対する活動や研究を紹介しました。
 最初に弘前大学の中路重之教授が青森県の短命県対策について解説し「短命県返上は医療関係者だけでなく、県全体の動きが不可避である」と、地域内の各職種による強い連携の重要性を説きました。
 名桜大学人間健康学部の砂川昌範教授は国頭村住民とハワイオアフ島在住の沖縄県系移民を対象とした遺伝的背景と地域特性との関連性の追求に関する調査を行った「名桜大学学長特別政策経費 地域貢献研究萌芽的プロジェクト」、沖縄県北部地域住民の健康状態の現状とその問題点を医学的観点から包括的かつ詳細に調査を行う「弘前大学COI拠点間データ連帯 やんばる版プロジェクト健診」の二つのプロジェクトを紹介しました。
 琉球大学の大屋祐輔教授は、沖縄県の健康長寿を悪くした要因は胃がん、心疾患、脳卒中、肝疾患といずれも生活習慣病と結びつく疾病であると解説し、食生活の改善のため、地域と家庭で健康づくりを進める「ゆい健康プロジェクト」と沖縄の野菜を食べて健康長寿を取り戻す「チャンプルー研究」の実施状況を報告しました。
 ハワイ大学のブラットリー・J・ウィルコックス教授とリチャード・アルサップ准教授は、ハワイにおける沖縄移民を含む日系人8,006人を対象とした健康長寿に関する調査・研究を主とする「ホノルルハートプログラム」について紹介しました。また、「調査の結果、健やかに年齢を重ねるにはライフスタイルや食事の他に遺伝子も関係することが分った」と発表し、食生活・社会参画と遺伝子の相互作用を研究していくことで、健康長寿促進に繋げていきたいと述べました。
 国際高齢者団体連盟のジャーナル編集者グレッグ・ショー氏は、高齢者の寿命は、内在的な能力と環境により左右されると解説し、「社会的な繋がりのない、孤立した高齢者は、身体・精神機能の維持が難しい状況になる」と健康的な高齢化や、年齢に優しい環境づくりへの対策が必要であると述べました。

山里学長 中路教授 砂川教授 大屋教授 ウィルコックス教授 アルサップ教授 ショー氏

Ⅱ部 健康宣言
 第Ⅱ部健康宣言では、北部広域市町村圏事務組合の比嘉克雄事務局長が健康宣言に至るまでの経緯を説明し、続いて北部市町村会会長の當眞淳宜野座村長が北部12市町村を代表し健康宣言を行いました。

やんばる健康宣言
私たち北部12市町村は、持続可能な社会を実現します。
この地域で多くの人が長く安心して、健康的に暮らせる環境づくりが必要です。
やんばる住民の健康向上をはかる8つの方向性を検討し、実施に向けて努力いたします。

【アジェンダ8】
ヘルスリテラシーの向上、医の拠点づくり、知の拠点づくり、専門人材育成、医療データの蓄積・活用、ITインフラの活用、産業誘致・育成、パートナーシップ

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Ⅲ部 分科会
分科会A<ヘルスリテラシー向上のための活動>
 第Ⅲ部分科会Aでは「ヘルスリテラシー向上のための活動」をテーマに花城和彦氏(琉球大学准教授)の進行のもと4人の講師が発表を行いました。
糸数公氏(沖縄県保健医療部保健衛生統括監)は、26ショックや、沖縄の働き盛り世代の高い死亡率など、健康に関する沖縄県の現状を報告し、沖縄県の健康長寿復活に向けた取組を紹介しました。次に、神出計氏(大阪大学大学院教授)は、最新の研究から知る高齢期を健康に過ごすための方法と題し、9年前から行ってきた「長期縦断的な健康長寿疫学コホート(SONIC)」研究の知見を中心に紹介し、高齢期を健康で過ごすためには高齢者のみならず青壮年を含めた個々の姿勢が重要であると解説しました。次に、石川清和氏(今帰仁診療所)は、沖縄で採れるシークヮーサー、モロヘイヤ、ニガナなどの野菜・果物・薬草を活用した医療の取り組みを紹介し、また、野菜栽培を通した幼い頃からの食育の大切さや日頃の活動・健康的な生活を患者さんとともに取り組んでいることなどを紹介しました。最後に、宮里好一氏(医療法人タピック理事長)は、医療法人タピックの事業展開を紹介し、さらに、動植物公園を拡充して設置する「やんばる健康保養地」構想について提案、世界一の健康保養地になれる可能性があると強調しました。

分科会B<やんばるの産業と健康増進>
 第Ⅲ部分科会Bでは「やんばるの産業と健康増進」をテーマに林優子(名桜大学教授)の進行のもと4人の講師が発表を行いました。長山真由美氏(株式会社前田産業 営業企画課 課長)はホテルマハイナで地域の魅力を活かした観光商品やホテルイベントとして、マクロビオティックやさくらピクニックなどを紹介し、今後も健康増進を意識したサービスやイベントを企画していきたいと発表しました。次に、小野雅春氏(名護市商工観光局)は名護市が推進する「自転車のまちづくり」について、自転車専用道路の整備をはじめとする事例を紹介し、地域住民の健康促進を図るとともにツール・ド・おきなわを利用して産業を興し、北部地域の活性化を目指したいと発表しました。次に、芳野幸雄氏(農業生産法人株式会社クックソニア代表取締役)は料理人、加工所と連携し、国産スパイス商品の開発ややんばる食材が楽しめる香祭(カバーさい)を紹介し、地産地消の地域性をいかした「食」のアクションを提案しました。最後に、中島滋氏(文教大学教授)は沖縄の鰹節消費量に着目し、鰹節に含まれるヒスチジンが持つ抗肥満作用について解説し、伝統料理の価値を見直し鰹節で健康長寿を復活しようと提案しました。

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分科会Aの様子 分科会Bの様子

家族で楽しめる健康イベント
 サクラウム1階ピロティ―では、「市民参加型分科会」「体験型健康学習分科会」が併設されました。「JOYビート体験」や「ロコモ度チェック」など、家族で楽しめる健康プログラムから「動作チェック」や「内臓脂肪チェック」のような本格的な健康チェックまで、数多く設置され、参加者と学生の交流がみられました。

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ミニ講義「わったーかい まかちょーけー」 地域の方と食生活の栄養バランスを考えるコーナー 気になる血管年齢を測定!
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ミニ講義「酸素ファーストエイド」 やんばる健康プロジェクトの紹介をするコーナー ロコモ度チェックに挑戦!

<総評>
 11月3日の朝早くから、サクラウムの1階にスポーツ健康学科・看護学科の学生ボランティア・教員が会場設営を始めていました。生憎の秋雨で来場者はかなり減るのかなと、不安が過りました。そんな矢先に、スタッフとボランティアからの明るい挨拶が沈みかけた心に浮力を与えました。午前中は、地域で活躍される市民をお招きしての市民参画型分科会や健康・体力チェックが実施されました。
 シンポジウムⅠ部では、弘前大学 中路先生、名桜大学から私、琉球大学 大屋先生、ハワイ大学 Bradley J. Wilcox先生とRichard Allsopp先生、カナダからGreg Shaw先生が健康長寿の課題、最新の研究成果さらに高齢者の幸福を可能にする健康な老化についての基調報告がありました。Ⅱ部では、北部12市町村の首長が一丸となって力強く「やんばる健康宣言」を行いました。10年先、20年先いや100年先を見据えた英断であり、歴史的な瞬間に立ち会えた喜びが湧き上がりました。Ⅲ部の二つの分科会では、健康長寿復活に向けて医療者、事業主、政策担当者、大学人など様々な立場から活発な討論が行われました。また、大阪市大正区長の吉田康人氏も本シンポジウムの趣旨に共感され、遥々来場下さり、今後の名桜大学との連携等について意見交換を行いました。雨上がりの夕刻、琉球大学牛窪潔先生のご挨拶で幕開けとなった懇親会では、伊集盛久北部振興会長の来賓祝辞、沖縄県立芸術大学比嘉康春学長による琉球舞踊の解説と琉舞、フラダンスさらに名桜エイサーで大いに盛り上がりました。
 シンポジウムへの参加者は170人でした。シンポジウム終了後も幾つかの団体や個人からシンポジウム資料の請求や共同事業の展開など、大きな反響がありました。山里学長発案で開催された沖縄の健康長寿復活を見据えた本シンポジウムを開催して本当に良かったです。シンポジウムの準備・調整・運営に協力して頂いた教職員および学生の皆様に心より感謝申し上げます。

総評:人間健康学部長 砂川昌範

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