沖縄の公立大学 名桜大学(沖縄県名護市)

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平成27年度入学式―学長告辞

掲載日:2015年6月12日学長室から

 本日、名桜大学は、学部学生501名、大学院生11名の新入生を迎え入れました。新入生の皆さん、入学おめでとうございます。また、保護者、ご家族、そして関係者の皆様にも、心からのお祝いを申し上げます。
 さて、いま壇上にいる私たちは、先ほど本学の設立団体理事長の稲嶺進名護市長を先頭に、「名桜大学校歌」の演奏に合わせて入場しました。お手元の入学式要覧に「校歌」が印刷されています。一番目の歌詞に、「俊英集う 名桜は / 世界の海の津梁ぞ」とあります。「津梁」とは、「架け橋」という意味です。15世紀に首里城の正殿にあった万国津梁の鐘に、琉球は世界を結ぶ架け橋(津梁)であると刻まれていました。三番の歌詞をご覧ください ―「自由と進歩の 旗かかげ / 平和をめざす 我が母校 / 若夏立たば はばたきて / 行く先々を 和やけむ」。ここには、本学の建学の精神である「平和・自由・進歩」が歌われています。また、若夏とは、沖縄地方の4月から5月にかけての季節をいう言葉で、15世紀から16世紀にかけて琉球王国で編纂された『おもろそうし』に見られる古語です。本学で琉球文学を研究する照屋理先生によれば、「行く先々を 和やけむ」とは「行く先々を『和やか』にするだけでなく、地域や人々に調和をもたらし、まとめていこうとする意志、リーダー的イメージが歌い込まれている」とのことです。

 この校歌を作詞された外間守善先生は、本学の創立に関わった方でもありました。先生の『南島の神歌』という著書によれば、琉球の古語である「和やける」は、日本古語の「なごやか」と同じ根っこを有し、「なご」は湾に囲まれたおだやかな土地と関連があるようです。ですから、「名古屋」という地名や、本学が存在する「名護」の地名も、「なごやか」あるいはオモロ語の「なごやけて」と繋がっているとのことです。

 先ほども申し上げましたが、名桜大学の建学の精神は、「平和・自由・進歩」です。「平和」は人類普遍の理念を表す言葉ですが、同時に、本学の創立者たちが自らの体験に基づき、深い祈りを込めて選択した言葉でもあります。本学の創立者の1人で初代学長の東江康治先生は、学徒兵として1945年の沖縄の戦場に送られました。また、第2代学長の東江平之先生、第4代学長の瀬名波榮喜先生、校歌を作詞された外間守善先生も沖縄での激烈な地上戦を生き抜いてこられました。このような方々の深い思いが、「平和」という本学の理念の背景にあります。今年はあの戦争から70年、「平和」の意味を改めて心に刻みたいと思います。

 「自由」も人類普遍の理念です。自由を求める戦いが社会を変革し、人類の歴史を創造してきました。しかし、自由には個人としての責任が伴います。自由から逃走すること、すなわち個人が自由を享受するだけで責任を果たさないときには、かつてエーリッヒ・フロムが指摘したように、圧政に苦しむことになります。沖縄は1945年から1972年までアメリカの統治下にあり、冷戦の中で自由が制限されました。このため沖縄では「祖国復帰運動」が展開されましたが、私はこの運動の本質は自由を求める公民権運動であったと考えています。このような歴史も本学の理念である「自由」の背景となっています。

 新入生の皆さんは、大学生になることで、これまでと違って大きな「自由」を獲得することになりました。様々なことについて、自ら判断し選択しなくてはなりません。これは責任をともなう自由です。自由から逃走するのではなく、時には自由と闘争しながら、つまり、自らの自由を抑制し、自らを律して、学ぶことも必要になるでしょう。また、大学には「真理」と信じられてきたものを疑う自由もあります。大学はそのような自由を保証し、学びの喜びへ皆さんを案内します。

 名桜大学のカリキュラムは建学の精神を基盤として設計されています。大学は、人類がこれまで蓄積してきた知識の広がりと深みを学生に示すと同時に、その最先端でこのような知の体系を批判的に検討しつつ、新しい知を創造し教育する場です。したがって、大学生になるということは、多様な考え方に自らを開き、幅広い知識を統合した人間として成長すること意味します。これは本学の特色の一つであるリベラルアーツ教育が理想とする人材像でもあります。このような学びへの挑戦を支えるものは、自由に考えることができる教育環境です。開学20周年・公立大学法人化5周年を記念して昨年完成した学生会館SAKURAUMは、学生が自立して自らと世界について考える学びの場として、皆さんを迎える準備を整えています。

 行く先々を和やけ、世界の海をまたぐ津梁=架け橋となることができる教養・専門知識・円満な人間性、自由でしなやかな思考力、進歩を求めて未踏の世界に果敢に踏み込んで行く知性と勇気 -- 名桜大学はこのような力を有する人材の育成を目標としています。
 本日入学された新入生の皆さんが、日々研鑽を重ね、4年後または2年後の若夏の空に、高く誇らしく羽ばたくことを期待いたします。入学、まことにおめでとうございます。

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