沖縄の公立大学 名桜大学(沖縄県名護市)

学長あいさつ大学紹介

未来への跳躍

名桜大学 学長 砂川昌範

 名桜大学は沖縄本島北部12市町村と沖縄県の出資による公設民営の大学として1994年に設立、2010年に公立大学に移行しました。大学名称は、国内で最も早い1月に桜咲く名高い場所であることから命名されました。本学が所在する沖縄本島北部は、2016年やんばる国立公園に指定され、2021年世界自然遺産に登録された緑繁る山原(やんばる)の自然豊かな地域です。学生構成は県内と県外出身者がほぼ半々、北海道から石垣島まで、全国から学生が集っています。また、正規および交換留学生さらに海外移住者子弟等研修生も多く、国際交流も活発です。大学での学び、本島北部ならではの経験学習・異文化体験、さらにアウトドアスポーツなど様々な事にチャレンジできる恰好の場所です。

建学の精神と大学の使命・目的

 「平和を愛し、自由を尊重し、人類の進歩と福祉に貢献する国際的教養人と専門家の育成」という建学の精神は、東江康治初代学長と外間守善先生(法政大学沖縄文化研究所長を歴任、本学の創設に尽力)との議論から生まれました。外間先生が提案された「自由・進歩」に、東江先生は不幸な自身の戦争体験から「平和」を先頭に加えました。建学の精神に「平和」があるのは、沖縄の大学として深い意味と強い意思があります。平和について多元的重層的に探究し、その成果を教育を通して次世代に繋げていく使命があります。
 歴史的にみると大学は、人類の普遍的価値の継承・発展と新しい価値の創造に寄与することを期待され、中世ヨーロッパに誕生しました。本学のシンボルマークである桜の五枚の花びらは、真・善・美・聖・健の人類の普遍的価値を象徴しています。新しい価値の創造に寄与する大学の営みが研究です。研究は大学における考える機能といえます。世界中の大学は創造された新たな知の辺境に身を置き、さらにその最先端(カッティングエッジ)を延伸しようと努力する共同体です。大学の教員は同時に研究者であり、それぞれの専門分野で新たな知の生産に励んでいます。研究から得られた成果は、学生がこの世界を生きていく糧となる教育に活用されます。

予測困難な時代を生き抜く力

 情報技術に代表されるテクノロジーの急速な進化や人の移動を含む社会活動のグローバリゼーションの進展により社会は益々複雑化し、予測困難な時代に突入しています。このVUCA(変動性、不確実性、複雑性、曖昧性)の時代を生きるため、学生時代に自ら学び続ける力を身につけなければなりません。自ら学修目標を設定し、主体的な学修と適切な自己評価をとおして必要な学びを深化させ、目標を達成する自律した学修者を育成します。そのための仕組みが以下のとおり、準備されています。

「心を解放する」リベラルアーツ教育

 本学の教育の特徴にリベラルアーツ教育があります。リベラルアーツ、すなわちLiberal(自由な)Arts(学芸=学問と芸術)とは、七自由科(文法、修辞学、弁証法の三学および算術、幾何、天文学、音楽の四科)を起源とする学問体系を指します。ここでいう自由とは、他者から与えられるものではなく、自ら言葉を正しく使い、論じ、真実でないことから解放されることを意味します。主に教養教育科目として組み込まれ、自由な発想のもと将来に亘って自律的に学ぶ基本能力:批判的な読書ができる能力、批判的な思考能力、論理的に思考し判断する能力などを育成し、専門基礎教育・専門教育の礎となります。

学生による学生のためのピアサポート・ピアチュータリング

 本学の学生は、大学入学から修了まで、先輩・後輩コミュニティを大切にした相互支援を行っています。例として、総勢100名程のwelcome navigation~ウェルナビ~は学生の居場所づくりや人間関係づくりの支援およびイベントの企画・運営など学生主体の活動を行っています。
 また、学生の学びが止まることなく前進し続けるための学習支援として(1)文章力を養成するライティングセンター、(2)数理的な判断・分析力や基礎的・汎用的な情報活用能力を養成する数理学習センター、(3)外国語を用いたコミュニケーション力を養成する言語学習センターがあり、学生会館(SAKURAUM)に設置されています。研修を受けた大学院生・学部生からなるチューターが全ての学生を対象に正課の講義と連携しながら学習支援(ピアチュータリング)を行います。

国際社会で活躍できる人材の育成

 本学は、国際社会で活躍できる人材の育成を教育目標に掲げています。米国、中南米、さらにアジアなど海外17カ国・1地域の39大学と交流協定を締結しています。標準的留学期間を1年間とし、本学に在籍したまま海外交流協定校へ留学する交換留学制度があります。留学中に修得した単位は本学の単位として認められ、卒業要件単位を満たすと4年間で卒業する事も可能です。
 教養教育カリキュラムでは1、2年次の希望学生を対象に、夏季休暇を活用した1週間の海外スタディツアー(中国コース、シンガポールコース)があり、留学を見据えた準備学修として有用です。国際観光産業学科では学生が海外の企業(マレーシアのホテル、韓国の済州観光公社、シンガポールの沖縄県事務所)で3~4週間程度就業体験を行う海外インターンシップがあり、国際文化学科では座学だけでは得ることの難しい確かな現地理解と幅広い知識、異なる文化や習慣を尊重する国際人にふさわしい態度を身につけることを目標に約2週間の現地実習(沖縄、日本、アジア、中南米、国際協力の5つのコース)があります。
 学生が海外での学びを安全に安心して行えるよう、本学は移民県沖縄の強みである世界ウチナーンチュネットワークを活用させていただいています。2023年、国内外に23支部を有するWUB(ワールドワイド・ウチナーンチュ・ビジネスネットワーク)と名桜大学は国際産学連携包括協定をサンパウロ市で締結し、WUB推薦研修生および名桜大学派遣学生を双方が支援していきます。

課外活動と地域ボランティア

 名桜大学の大きな特徴は、教室を飛び出して体験する課外活動や地域でのボランティア活動がとても盛んであることです。学内外の特色ある活動をとおして、同級生、先輩後輩、教員と学生、さらに地域と大学など多元的な繋がりを通して、貴重な経験を積み上げています。
 活動が11年目に入った名護市と名桜大学の連携事業である名護市学習支援教室ぴゅあは、これまでの功績が認められ、2023年公益財団法人社会貢献支援財団より第59回 社会貢献者表彰、「第1回 未来をつくる こどもまんなかアワード」で内閣府特命担当大臣表彰、さらに2024年「スミセイ未来賞」文部科学大臣賞を受賞されました。
 また、食育推進支援サークルによる"屋部の浦子ども食堂"での朝食支援活動、RESAS研究会による沖縄RESASチャレンジ杯での最優秀作品賞受賞、沖縄グリーンバードによる街やビーチの清掃ボランティア活動、留学でお世話になったハワイへの恩返しとしてマウイ島の大規模な山火事に対する支援募金活動を行う学生、学生の活躍は枚挙(まいきょ)に遑(いとま)がありません。

感化力を有する大学教育

 学生は、在学中に多くの教員と語らい、多くの友人と出会い、深い洞察を得て、自身の世界を広げ成長していきます。神学者ジョン・ヘンリー・ニューマンがアイルランドカトリック大学学長就任の講演で、次のように語っています。「教師の人間としての感化力は,教育制度なくしてもその力を示すことができるが,教育制度は、教師の感化力なくしてはその機能を果たしえない。感化力あるところに生命(life)あり、感化力なきところに生命(life)なし」。
 情報通信技術や人工知能(AI)導入が益々促進され、インターネットを介してありとあらゆる知識(情報)を入手できる今、大学が存在し得る意義として、感化力が求められています。名桜大学は、これからも感化力を有する大学教育を通して、国際社会で活躍できる人材を育成していきます。

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