私は現在、「琉球諸語を対象とした効率的かつ大規模な言語資料収集・蓄積方法に関するメタ研究」(課題番号:23K12167;研究代表者:麻生玲子)という研究を進めており、自分の方言を残したい方や、自分はあまり話せないが地元の方言を残したい方と一緒に、琉球諸語各方言の一次資料の記録・保存に力を入れています。この研究の一環で実施した本部町渡久地方言の調査の成果が、2025年3月末に出版された本学の紀要雑誌『環太平洋地域文化研究』に「北琉球沖縄語本部渡久地方言の音調付き語彙資料」として発表されたので、報告いたします。
渡久地方言の資料収集は、私が本学に赴任してきた翌年の2022年からはじまりました。当時、入試・広報課にいらっしゃった職員のお父様、玉城淳さんが、地元の方言の語彙集作りに興味があるとのことで、調査を開始しました。コロナ禍であったため、書類や録音機のやり取りはすべて職員を介して行いました。淳さんはかなりのスピードで記入と録音の作業を終えてくださったのですが、私の方でのデータ整理と音調の聞き取り作業に時間がかかってしまい、ようやく直接お会いできたのは2024年の春でした。このような「ほぼ遠隔」でのフィールド調査研究でしたが、無事に成果を完成させ、お渡しすることができ、安心しています。
成果をお渡しした際、淳さんの(本部町の別地域出身の)同級生がこの資料を見て、自身の方言とはまた違うから書き足してみよう、とおっしゃっていました。少しずつでも資料収集の輪を広げられるよう、今後も継続していきたいと思います。現在も教職員、卒業生、ゼミ生の協力のもと、各地で一次資料を集めています。成果が出せ次第、また報告いたします。
報告:麻生 玲子(国際文化学科 上級准教授)
資料詳細:麻生玲子・尾朝祥子(2025)「北琉球沖縄語本部渡久地方言の音調付き語彙資料」『環太平洋地域文化研究』6:139-156
https://meio-u.repo.nii.ac.jp/records/2000138
2025年8月、調査協力者の玉城さんに研究成果をお渡ししました。 音声も公開予定です。