公立大学法人名桜大学

 

平成24年度名桜大学総合研究所国際シンポジウムを開催しました


琉球・沖縄の留学と社会形成

 

 平成24年度名桜大学総合研究所国際シンポジウムを平成24年11月23日(金)、名桜大学講義棟教室で開催しました。本シンポジウムは、「琉球・沖縄の『留学』と社会形成」というテーマで、琉球王国時代から戦後沖縄までの日本、中国、米国への「留学」の歴史に焦点をあて、琉球・沖縄の人々が海外でどのように知識を獲得し社会形成に役立ててきたのか、歴史的な観点から「留学」の価値の考察をするという目的で実施しました。基調講演者として米国ペンシルベニア州立大学歴史学部からグレゴリー・スミッツ准教授(アジア近世思想史研究)をお招きしました。スミッツ氏は米国における琉球史研究の第一人者であり、これまで多くの著書を出版しており、平成23年10月には、『琉球王国の自画像―近世沖縄思想史』(ぺりかん社)が日本で出版され、今回が著書出版以来の初めての沖縄での講演となりました。本シンポジウムは、専門分野を超えた学際的共同研究及び若手研究者育成を視野にいれて開催され、県内の女性若手研究者である琉球大学法文学部研究支援員の前田舟子氏(琉球史研究)とうるま市立中央図書館市史編さん係の勝連晶子氏(琉球史研究)、また筆者(社会学)による個別研究報告が行われました。コメンテーターとして琉球大学の高良倉吉教授(琉球史研究)と石原昌英教授(言語政策研究)をお招きしました。本シンポジウムには、学内教職員及び学生、並びに学外者の約80人以上が参加し、フロアーからの質疑及びコメントも積極的になされました。

基調講演をするグレゴリー・スミッツ氏

 

 本シンポジウムは、総合研究所所長小川寿美子教授の開会の挨拶で始まり、二部構成で開催されました。まず、第一部の基調講演ではスミッツ氏が、「海外知識の獲得―15世紀~19世紀の沖縄と東アジア」という題目で、琉球・沖縄における海外知識獲得の過程を古琉球、近世、近代の始めまで時代を遡ってその概要を話しました。海外知識が、琉球・沖縄において国際外交をする上での必要要素だったこと、社会形成に役割を果たしたこと、そして娯楽を堪能するためにも習得されたものだったという興味深い話しでした。第二部の個別研究報告では、琉球・沖縄の異なる時代における「留学」について、前田氏、勝連氏、筆者が研究報告を行いました。まず、前田氏は「官生派遣に見る琉球王国の形成」という題名で、約500年間にも及んだ琉球王国時代の中国への「官生」派遣について、派遣年代を四つに区分しそれぞれの時代の特徴及び派遣に関わった琉球王国の意図を考察しました。次に、勝連氏は、「近世期先島における医療知識・技術の修得―首里王府の医療政策との関わりから」という題名で、近世琉球社会において中国や薩摩で養成された医師の帰国後の動向と医療活動について説明しました。最後に筆者は、「戦後沖縄の『米留』制度―米国留学への動機と社会貢献―」という題名で、戦後沖縄米国統治下の米国留学制度に焦点をあて、インタビュー調査を通して得た当時留学生だった方々のライフストーリーを基に、沖縄戦や皇民化教育を経験した世代の米国留学への動機要因及び米国留学における体験に基づく帰属意識の変容について報告しました。3人の研究報告は、「留学」を歴史的連続性の中で捉え、「留学」のもつ普遍的価値及び社会的影響について様々な視点から問題提起をする研究報告となりました。

個人研究発表の様子(左から前田氏、勝連氏、筆者)

 

 コメンテーターの石原教授には、自身の米国留学中の体験を踏まえ、基調講演及び各研究報告のこれからの方向性について提示していただきました。また「留学そのものについての研究はこれまでほとんどされてこなかったので、今後さらに各研究を掘り下げ深めていってほしい」と話されました。また高良教授は、「『留学』を切り口にして琉球・沖縄の歴史を捉えた時、従来の政治、外交、行政では見えてこない、琉球・沖縄の人々の社会形成について考察することができる」と話されました。また、グレゴリー・スミッツ氏と高良教授からは今後の研究の発展のために、海外へ移民として渡り、後に沖縄に帰ってきた人々が移民先で得た知識をどのように社会で展開したか等といった多様な「留学」のあり方を研究していくことを期待するという助言をいただきました。

コメンテーターの石原教授(左)と高良教授(右)


 フロアーからは基調講演及び各研究報告について多くの質問やコメントがありました。シンポジウムの内容について「普遍的な広がりをもった研究トピックで、今後『留学』研究の体系化に期待したい」とのコメントがありました。また、近年現在の日本において留学する学生が減少している問題や、また今後の沖縄からの留学先について、フロアーを交えて活発な意見交換が行われました。本シンポジウムには、本学の学生も多く参加しており、フロアーから「若い学生も『留学』を自分の人生の『戦略』として捉え、是非とも挑戦してほしい」というコメントがありました。



フロアーからの質疑応答


総評:山里 絹子(教養教育センター 講師)