公立大学法人名桜大学

 

第11回人間健康学部公開シンポジウムを開催しました

第11回 名桜大学人間健康学部公開シンポジウム

 やんばる(山原)で安心して子どもを産み育てるとは

ー支え合うやんばるの母性を考えるー 

 

 平成27年9月13日(日)に名桜大学多目的ホールにおいて、第11回名桜大学人間健康学部公開シンポジウムを開催しました。テーマには、『やんばる(山原)で安心して子どもを産み育てるとはー支え合うやんばるの母性を考えるー』を掲げました。

 沖縄県は、全国1位の出生率12.2で、やんばるでは10.3と低くなるものの、全国の8.2を2.1ポイントも上回っています。平成24年度のやんばるの出産数は1,041件で出産数は微増傾向にあります。一方、平成24年の沖縄県の2500g未満の低体重児出生率は11.6(全国9.6)と全国1位であり、「やんばる」ではさらに高く12.8で、低出生体重児の割合が高いという周産期保健医療における課題があります。また、やんばるには、産科医・助産師の不足、若年妊産婦やハイリスク妊産婦も多く、さらに、過疎地や離島などの地理的不利等からくる、出産前後の子育て支援の在り方が課題になっています。

 このやんばるで、安全に安心して定住するためには、医療環境の整備や保障と同時に、安心してこどもを育てられる地域の環境(周産期医療の体制づくり)が大切です。現在、やんばるには民間の産婦人科が2つ、県立病院の産科・小児科が周産期医療を担っていますが、まだまだ、医師をはじめとする医療従事者の人材育成及び確保が課題となっています。沖縄県保健医療計画(第6次)では、地域周産期医療として助産所の目標に、「正常分娩の対応」、「低リスク妊婦の健診」、「妊産婦の保健指導」をあげており、助産師の役割拡大が望まれています。助産師は、女性のライフサイクルやマタニティサイクルの健康支援を専門としています。助産師の活用は、やんばるの文化や特性を踏まえつつ、妊娠前から切れ目のない継続的な支援(ささえあい)が、家族や住民に寄り添うヘルスケアに繋がります。やんばるの母性を考えることは、次世代を育むことであり、安心して健康な子どもを産み育てる地域づくりの実現になります。

 本シンポジウムは、やんばるに住む母親の思い、医療者の思い、医療機関の取り組みの現状などのお話を通して、やんばるの母性を考え、「安心して健康な子どもを産み育て、支えあえる地域づくり」 の実現につなげていくことを目的として開催しました。

弾き語りで「童神のこころ」を披露した古謝美佐子氏

 シンポジウムは、基調講演とパネルディスカッションの2部構成とし、1部の基調講演は、沖縄民謡歌手の古謝美佐子氏による「童神のこころ」と題する歌とお話でした。古謝美佐子氏の人生の節々のお話と、天からの恵みとして生を受けた我が子の成長を願って歌に託した「童神のこころ」は、聞き手のこころに染み入り、本当に感動深い歌とお話でした。

 2部のパネルディスカッションでは、筆者による「名桜大学看護学科で準備段階にある大学院助産師養成コースの必要性と現状」に関する報告が行われ、続いて4人のパネリストの報告が行われました。パネルディスカッションは、まず各パネリストが現状と課題に対する考え方と取組を包含したプレゼンテーション等を行い、その後ディスカッションに移るという形式でした。

 先ず、福岡県立大学大学院看護学研究科教授の佐藤香代氏からは、「助産師教育の立場から」少子高齢化、地域・家族機能の逸弱化が進行している今、助産師は地域社会と生活の場にしっかりと根ざし、安全で安心して子どもを産み育てる地域づくりを担う中核となる必要があると提案がなされました。そのためには確実な実践能力と共に、独創的な視点で新たなケアを提唱し社会に発信していく力が求められます。揺るぎない助産哲学を持ち、その実践に変革をもたらす人材の育成、すなわち助産師のリーダー育成の必要性を力強くお話していただきました。

 続くパネリストの荒木善光氏(国頭村役場福祉課保健師)は、「保健師の立場から」安全に暮らせる地域づくりをめざし、赤ちゃんから高齢者までのすべての方を対象としたさまざまな保健事業に取り組んでいる状況が報告されました。地理的不利条件を抱えつつも「やんばるで子どもを産み、育て、住み続けたい」と願う一人一人の親子を支えていく保健師の姿勢・情熱がスピーチに如実に現れていました。

 3番目の浦崎公子氏は、やんばるで4人の子どもを育てておられる「母親の立場から」講演されました(職業は美容師、ホメオパス、自然療法士、アロマコーディネーター)。ご自身が妊産褥婦の時に感じた揺れ動く心理状態や、否定的な気持ち、思い通りにならない経験から、ホリスティックケアの重要性を感じ、アロマ、アーユルヴェーダ、自然食療法、東洋医学、ホメオパシーなどを学んだ経験を述べられました。また、自宅出産を通して助産師の存在の大きさを実感し、長期的な助産師のサポートの必要性について、聞いている人々を引きこむように語ってくださいました。

 4番目のパネリストである沖縄県立北部病院産婦人科医長の仲本剛氏は、「医師の立場から」やんばるにおける周産期医療(出生数や母体救急搬送等)の統計データを基に、この10年間を振り返って講演されました。県立北部病院では平成17年4月に常勤医が不在になり、産婦人科診療を休止して、その後、診療の再開・制限・休止を繰り返している経緯があります。仲本氏からは、地域の方々の声に真摯に耳を傾け向き合い、温かい医療を実践している内容が述べられていたのが印象的でした。その後のディスカッションでは会場からの質問に答え、活発な質疑応答がなされました。充実した産み育て環境を整えるためには、地域住民と保健医療・名桜大学がつながり、さらにより深い連携が大切であると最後に提言を行い、パネルディスカッションは盛況のうちに終了いたしました。

パネリスト 佐藤香代氏 パネリスト 荒木善光氏 パネリスト 浦崎公子氏 パネリスト 仲本剛氏

 

 おわりに、シンポジウムでは、150余人の来場者のみなさまにアンケートを実施し、6割を超える方々からの有効な回答を得ました。シンポジウム全般の満足度は80%近くあり、たくさんのコメントが寄せられました。「やんばるの現状を知り安心して子どもを産みそだてることについて、考える機会になった」など多くの肯定的な意見から、やんばるの現状と課題についての議論を通じてその周知を図るというシンポジウムの開催目的は、概ね達成できたと評価できます。また、やんばるの出産環境についての課題や、名桜大学に大学院助産師養成コースができることへの自由記述の中には、「助産師が活動できる場が増えることについて切に考える機会になった」、「スペシャリストな助産師が増えることで、社会においても充実するのではないか」、「助産師の質の向上することで安心して、子を産める環境の要となる、大学院開設を強く要望する」など、名桜大学に助産師コースができることへの期待する声が寄せられていました。たくさんの温かい言葉をいただき改めて参加いただいた皆様に感謝が溢れました。

 最後に、名桜大学の大学院助産師養成コース開設に向けた取り組みが、やんばるで安心して子どもを産み育てる人々のQOL向上に寄与できることを祈念し、第11回人間健康学部公開シンポジウムの報告といたします。

 

筆者による「名桜大学看護学科で準備段階にある大学院助産師養成コースの必要性と現状」

 

総評:島田友子(看護学科教授)

シンポジウムWG委員金城壽子、鈴木啓子、名城一枝、永田美和子、清水かおり、松下聖子、大城凌子、比嘉憲枝、伊礼優 (看護学科教員)