公立大学法人名桜大学

 

第1回リベラルアーツ機構FD研修会報告

第1回リベラルアーツ機構FD研修会
「大学における成績評価の多元化と授業改善」

 

 リベラルアーツ機構は、平成27年7月30日(木)に、教員の教育力向上を目的に、第1回リベラルアーツ機構FD研修会を開きました。講師は、京都三大学教養教育研究・推進機構の児玉英明特任准教授で、「大学における成績評価の多元化と授業改善」と題し、豊富な資料をもとにお話いただきました。講話は、リベラルアーツを取り巻く動きから、これからの教養教育はどう取り組まれることが望まれるかへと展開し、そのうえで、教養教育の目標が提示されました。

講師の児玉英明氏

 まず、昨今の全国的な潮流として、「教養教育を見直す動き」があることが紹介されました。その背景には、入試形態を多様化してきた大学に対して、求められる教育力も多様化していることがありました。講師によれば、以前とは異なり一般入試を経て入学する学生の割合が低くなっていることに伴い、大学は今、かつては担保できていた入学時の学力が担保出来なくなっています。これに対し、どのような学習支援策を行っているかが、「大学の教育力」を判断する有効な手段となっているということでした。
 その例として、近年メディアで公表される「大学の実力」を表す指標をあげました。指標は、「英語の学び直し」、「日本語の学び直し」、「数学の必修化」の他、アクティブな授業形態であるか等、大半が学習支援の取り組みを測る要素で占められていました。このことは、リメディアル教育、初年次教育、キャリア教育に関する教養教育改革の実績が、「大学の教育力」を評価する指標となっているものと結論づけられ、リベラルアーツの重要性が高まっていることが伺えました。
 次に、こうした教養教育の充実には、初年次教育の段階で、「“問いの柱”を意識して書く力」を身につけることを徹底的に行うことが重要であるということでした。これはすなわち、学問の基礎である「問題意識を持つ力」を養うことであり、受け身ではなく積極的に社会を見る目が求められます。こうして身についた力は、発展的に、「思考を言語化し、論理的に伝える力」となるでしょう。その文脈では、初年次のライティング教育が大きな意味を持ってくると言えます。
 講話では、初年次のライティング教育について、高崎経済大学の経験を例に、ライティングの授業を担当するのは国語(文学)以外の教員であるほうが効果を発揮すると報告されました。さらに今後は、教員の側も、自身の専門分野以外に、副専攻としてライティングの担当も可能であることが求められてくることを示唆しました。
 児玉氏は、このような取り組みによって行われる教養教育の目標を、民主的市民の形成、公民とは何かを考え身につけることに置き、その実現には、教職員の協働による学習支援策の構築が不可欠であると指摘しました。
 研修会の出席者は60人[1]で、出席者からは、質問順に、「大学で学ぶ意義」、「教養教育とキャリア教育の関わり」、「初年次教育と専門教育の連携」、「学生と対話する時間の確保」について質問が出され、児玉氏は、次のように応答しました。
 第1の質問には、「大学で学ぶ意義は、多様な考え方の人がいることを知る事ではないか」と述べました。第2の質問には、「教養教育とキャリア教育には親和性があると思うが、キャリア教育では、学問分野を横断して通用する論理的思考や汎用的なものが重視される傾向がある事に対して、人文社会自然それぞれの分野に発展するリベラルアーツ、教養教育は、学問のディシプリンに拘ることが重要であるため、両者にはズレが生じるかもしれない」と答えました。第3の質問には、「専門の先生も、当事者意識を持ってレポート作成論のような科目を担当する必要がある。レポート作成論は今後、大学の発進力として重要になってくるので、教員の意識改革が必要だろう」と述べ、第4の質問には、「学生が集まるカフェで食事をするなどの肩の凝らない工夫でよいのではないか。意識を学生と対話することに向けてみる、授業改善は意外とシンプルなこういうことから変化があると思う」と、自身の経験を交えて答えました。
 今回のFD研修会を経て、社会で起きている事象に敏感に反応し、問題を察知する力を育むことが、教養教育の目指すところであることを再確認できました。本学の授業改善のひとつの鍵としてリベラルアーツを位置づける時、こうした視角から、どのようなカリキュラムや授業改善の指針を形成するかが検討されます。
 本学には既に、リベラルアーツ機構の下に言語学習センター(LLC)、数理学習センター(MSLC)、ライティングセンター(MWC)の3つが設置されており、教養教育を更に充実させる体制が整っています。また、今年度から共用を開始した学生会館(SAKURAUM)は、学生と対話する空間として最適な環境を提供しています。今後、これらの体制・設備を活用して推進されるであろう教養教育改革は、児玉氏が指摘されたように、その礎に本学の建学の精神「平和・自由・進歩」を据えることによって、さらに力強く確実なものとなるでしょう。

                 記:真喜屋 美樹(リベラルアーツ機構 准教授)


研修会の様子

 

[1]全参加者数60人の内訳は、以下の通りです。
看護学科26人、国際学群18人、スポーツ健康学科7人、職員8人、研究生1人。