公立大学法人名桜大学

 

大学の世界展開力強化事業:チェンマイ大学(タイ)留学報告


国際文化研究科 上野玲里
 

 平成26年8月初旬からタイのチェンマイ大学大学院(政治行政学部)に「大学の世界展開力強化事業」のセメスタープログラムを通して留学している。チェンマイ大学の広さは東京ドーム87個分という前情報のもと、いざ寮から所属する政治行政学部まで徒歩で向かうと、25分かかる。学内の地図を日々持参していないと確実に迷子になるほどとにかく広い。 学内には無料で走るシャトルバスがあり、学生は皆それに乗車して各々の学部へと向かう。


 
メインゲート                                    シンボルの象がお出迎え


 学内には、学部棟のほかに寺院や湖、学部1年生専用の寮(2年生に上がる際に退寮)、銀行、郵便局、薬局、学生用クリニック、動物病院、美術館、メイン図書館(99万冊所蔵)、各学部の図書館、語学センター、フィットネスパーク、スタジアム、セブンイレブン、陸上競技場やサッカー場など、あらゆる施設があり、困ったことはほとんど学内で対応できる。
 タイで屈指の名門校であるチェンマイ大学を一目見ようと、毎日多くの観光客がカメラ片手にシャトルバスで見学に訪れている。しかし、一方で悩ましい事件も起こっている。今年の2月にある国の観光客が、学部生用の制服を学生ストアで購入し、チェンマイ大学の学生になりきって、学内でふさわしくない写真を撮り、それをインターネットに公開したことから、国民の怒りを買いその国の人々の追放運動が起こったという話を聞いた。



政治行政学部棟の前


 

 大学院の講義は1コマ3時間、1対1で指導して頂いている。先生方はとても熱心に、そして語学力が乏しい私を全力でサポートして下さるので、どうにか日々過ごすことができている。どんなに感謝しても足りないくらい、大変良くして頂いている。
 政治行政学部の講義では政治学の「政治とは何か?」から始まり、タイの国民にとって「国王」はどのような存在か、そしてタイの政治情勢と、レッド対イエロー(ブラックもある)のぶつかり合いの模様、世界の腐敗認識指数から興味のある4か国を選択し、政治腐敗の仕組みと国民の意見について現在学んでいる。 講義が1対1なので、タイのことだけではなく日本のこと、私自身が日本をどのように捉えているのかを多く聞かれる。細かなニュアンスを伝えるために、辞書と頭の引き出しを片っ端からこじ開けて、意見を述べている。本からでは得られない「生の意見」を見聞きできることは、留学していなければ知ることはなかったと思う。
 また、私も異国にいるからこそ、日本について知らなければならなかったことや、タイに来て改めて感じる「日本人」としてのアイデンティティーに多く気づかされた。時代の変化に伴い、タイでも日本でも国民の政治に対する考え方は変わりつつあるが、共通していることは「我が国を自分たちの手で守りたい」ということだ。



外国人のオリエンテーション


 チェンマイ大学の学生数はおよそ38000人おり、今回、学部と外国人、そして大学院生のオリエンテーションに参加し多くの学友ができた。留学生の多くは近隣国のラオス、カンボジア、ミャンマーからが圧倒的に多く、次いで中国、欧米である。日本人の大学院交換留学生は私一人だった。(学部生は30人ほど)


 
 
大学院生の文化宿泊研修で訪れたNan and Phare Provinceにある寺院
 


 先日、チェンマイ市内から北へバスで4時間の「Nan」と「Phare Province」という場所へ大学院の文化宿泊研修に参加させて頂いた。十数か所の寺院や博物館を見学で12~19世紀頃に建てられた寺院やその近くで発見された仏像、銅器などが非常に綺麗な状態で保管されており、その美しさに皆食い入るように見入ってしまった。


 
メインカフェテリア                        大体20~30バーツの食事


 こちらでの食事は、寮にキッチンがないので、屋台と学食で済ませている。1食20~30バーツでご飯+おかず2品ほどが食べられる。学内にはメインカフェテリアのほか、各学部棟に学食があり、「カオソーイを食べるなら○○学部が美味しい!」、「パッタイなら○○学部がおススメ」など、現地情報を得ながら、所属学部以外にも足を運び、自分なりのランキングを付けるのが日々の小さな楽しみでもある。



現地の移動手段ロッデーン


 チェンマイには路線バスがないので、住民の移動手段はこのロッデーン(ソンテウともいう)という、乗り合いの赤いバス。乗車時に目的地を告げて乗るのだが、乗り合いなので、乗客がある程度いないと出発しなかったり、また近道の乗客から順に降りるので、自分の目的地にはすんなり着くことはほとんどない。 「チェンマイ市内は20バーツで移動できる」という暗黙のルールがあり、それを知らず「How much?」と運転手に聞いてしまうと、思わぬ高値を吹っ掛けられる。タイの物価は日本の約3分の1くらいなので、日本人の金銭感覚だと、高値といわれてもたかが数十円の違いなのだが、現地の金銭感覚だと、1つゼロを付けたすとその違いが大きいことに気づかされる。日本人の感覚では20バーツは60円で「安い!」と感じるが、現地での20バーツは200円ぐらいの感覚なので、20バーツは「高い!」のである。これが積み重なると、他にも使い道があったなとあれこれ出てくるので、日ごろのお財布管理はシビアになる。
 チェンマイ大学そして街の様子を出来る範囲でまとめたが、私が今回留学した目的と動機は、大学時代にタイに興味を持ちリサーチを開始し、大学院での研究テーマにした「日本とタイの性教育に関する事例研究:学校・子ども・保護者間の意識の相違について」、より深くリサーチをするためだ。
 国民の約9割が仏教徒のタイの学校教育ならびに家庭教育で実施されている性教育について調査することと、将来的に国際協力・支援の道に進みたいため、未来を担う世界の子どもたちに、私たちは何を残せるかを考えている。日本のものさしで異国(タイ)の文化、歴史、思想、国民を見るのではなく、異国(タイ)に習い、異国(タイ)から学ぶために、私は今、ここにいる。
 チェンマイに来て早1か月、順調な日も、そうではない日もあるが、タイには沖縄の「なんくるないさぁ」に似た言葉がある。「マイペンライ(=大丈夫!気にしない)」というフレーズだ。この言葉と柔らかく温かい笑顔、タイの人々に感謝しながら、私は今日も元気に過ごしている。