公立大学法人名桜大学

 

俵万智さんの「沖縄学」講義

 金曜2限(10:30~12:00)の講義「沖縄学」(担当:照屋理・屋良健一郎)では、毎週、様々な分野の外部講師をお招きし、講義をお願いしています。平成26年7月4日には、歌人の俵万智さんに「旅人と島人のあいだで」と題して講義を行っていただきました。
 俵さんは仙台に住んでいましたが、2011年の震災と原発事故の影響で石垣島に移住しました。講義では、石垣島に移住するまでの経緯や島での生活の様子について、ご自身の短歌を紹介しながら話してくださいました。  〈まだ恋も知らぬ我が子と思うとき「直ちには」とは意味なき言葉〉〈子を連れて西へ西へと逃げてゆく愚かな母と言うならば言え〉といった震災直後の作品からは、先行きの見えない不安、我が子を守ろうとする母親の強い決意が感じられます。震災後、俵さんは「できるだけ遠くへ」と考え、山形空港から羽田空港経由で那覇空港へ飛んだそうです。
 その後、友人のいる石垣島に移った俵さんは、そこで豊かな自然と出会います。〈「オレが今マリオなんだよ」島に来て子はゲーム機に触れなくなりぬ〉という歌は、島の自然の中で様々な楽しみを見つけ、変化する息子を詠んだ歌。俵さん自身もまた、変化していきました。〈トーストの焼きあがりよく我が部屋の空気ようよう夏になりゆく〉〈クモの巣にかかる獲物の増えてきて島の四月の夏はそこまで〉という二首。一首目は1987年に出版された『サラダ記念日』の、二首目は石垣島に来てからの歌。都市に住んでいた頃は「トーストの焼きあがり」の違いで季節の変化を感じていた俵さん、今では「クモの巣にかかる獲物」で夏の到来を知るそうです。
 俵さんと言えば恋の歌が有名ですが、石垣島に来て、自然を歌に詠むことが増えたと言います。また、基地問題をはじめとする社会問題を歌のテーマにするようになったのも、石垣島移住後の大きな変化だそうです。他にも、俵さんが大好きな石垣島出身の音楽ユニット・きいやま商店についての話もありました。俵さんは、きいやま商店の熱烈なファンですが、彼らの音楽に夢中になったことがきっかけで、島の文化や方言への関心が高まったり、他のファンと仲良くなったりしたそうです。「一つのことに没頭することが視野を狭めるとは限らない。世界が広がることもある」といった言葉が印象的でした。
 震災後にやって来た新たな土地で、その土地の自然や文化と出会い、地元の人々と交流し、積極的に学ぶ。その新たな出会い、発見を自分の言葉で表現し、外へ発信する。俵さんのそのような姿勢は、学生の皆さんにとって、名桜大学という場で、今後どのような大学生活を過ごし、どう学んでいくのかを考える上でも示唆的だったのではないでしょうか。
 質疑応答の時間には、〈「この味がいいね」と君が言ったから七月六日はサラダ記念日〉という俵さんの代表歌についての質問などが出ました。今回の講義を機会に、『サラダ記念日』『オレがマリオ』といった俵さんの歌集をぜひ手にとって、その豊かな感性に触れてほしいと思います。

総評:屋良 健一郎(国際学群 国際文化教育研究学系 准教授)


【学生の声】

 俵万智さんというと、国語の教科書にも載っているような歌人ですが、今回はそのような方の講義を聴くことが出来、光栄に思いました。
 教科書にも載っている『サラダ記念日』の歌がどういう背景で詠まれたのかを知り、三十一文字の中の一字一句全てに意味があるのだなあと思いました。
 また、石垣島での息子さんとの暮らしを短歌をもとに紹介してくださるなど、歌人としてだけではなく「一人の母」として生きる俵さんも知ることが出来たように感じます。 

宮脇 雅大(語学教育専攻3年、大分県立佐伯鶴城高校出身)