公立大学法人名桜大学

 

大学の世界展開力強化事業「セメスタープログラム」と「短期プログラム」

大学の世界展開力強化事業1:「セメスタープログラム」と「短期プログラム」

総合研究所 上地 直美

 文部科学省平成23年度「大学の世界展開力強化事業」に、「アジアの平和と人間の安全保障」を掲げた「4大学コンソーシアム(大阪大学、広島大学、長崎大学、名桜大学)」が採択された。以来、下記の大学院との10日間程度の「短期交換留学プログラム」と6カ月の「セメスタープログラム」とを実施している。平成25年9月20日(金)から4日間、マニラのデラサール大学に両方のプログラムの引率と見学を兼ね、私も参加した(詳細は、下記の金滋英と山本菜衣子の「留学報告」を参照)。

     
 短期留学プログラムメンバー                       マニラのマーケットで見た珍しい果物


 平成26年セメスタープログラムおよび短期プログラムのご案内
  毎年、セメスタープログラムの締め切りは4月末。短期プログラムの締め切りは通常5月末頃。英検やTOEFLやTOEICなどの点数は要求されないが、簡単な日常英会話はできるのが望ましい。派遣学生には航空券と現地宿泊を提供。日本人か日本永住資格を持つ派遣学生には、現地での生活費の殆どを賄える日本学生支援機構の奨学金(月額8万円で規定に反しない限り返済不要)が支給される。募集要項は、大学院生用掲示板と名桜大学ホームページに3月頃掲載される。セメスター留学希望者は、下記のどこの大学でも毎年受け入れる。短期留学先は、2014年夏はタイ(チェンマイ大学)の予定。質問のある方は、このメールアドレスはスパムボットから保護されています。閲覧するにはJavaScriptを有効にする必要があります。 (Naomi Uechi, Ph.D.)にE-Mailでお問い合わせください。

コンソーシアム東南アジア提携大学
デ・ラ・サール大学(フィリピン). チェンマイ大学(タイ). シアー・クアラ大学(インドネシア).
国立東ティモール大学(東ティモール). ナンヤン工科大学(シンガポール)

 


大学の世界展開力強化事業2: 「セメスタープログラム」派遣報告

国際文化研究科 金 滋英

 平成25年8月末からマニラのデ・ラ・サール大学大学院に「大学の世界展開力強化事業」のセメスタープログラムを通して留学している。「フィリピン人は楽天家だから、洪水でも貧しくても冗談を言いながら幸せに暮らせる」ということを何人かのフィリピン人から聞いた。デ・ラ・サール大学は、お金持ちの子弟が通うというのが一般のイメージだ。しかし、その大学の塀の一部は、スクワッターと呼ばれる不法定住者の集落に接し、大学の周辺には学校に通えない子供たちが裸足でうろうろしている。ファッショナブルな学生たちと対照的な自分たちの姿に、貧困層に生まれてしまった不条理を、どんな楽天家であったとしても感じないわけはない。
 私がマニラに到着した5日後、大規模な汚職事件に対し、デ・ラ・サールの学生も参加した十万人規模の抗議デモが行われた。アキノ女史の時のピープルパワーと呼ばれた市民運動では買収されて参加した層も少なくなかったとされているが、今回の抗議デモは完全に「自発的な市民によるデモ」という意義があるのだという。 
 一方、中国がフィリピンの領海に建造物を作ったことをきっかけに、対中危機感がわき上がっている。かつて、米軍基地を追い出すことに成功したフィリピンであるが、自国に軍備がほとんどなかったため、今回は米軍に警備応援を要請する事態となった。9月に開催されたショートプログラムでのデ・ラ・サール大学教授の講演の中でも、「フィリピンと日本はアメリカとの安全保障態勢をもっと強化しよう」といった論調があった。
 貧困問題も安全保障問題も感情的な議論だけでは複雑な現実から浮いてしまい、無力であることをひしひしと感じている。私の大学院での研究テーマは、「沖縄フィリピンハワイをめぐる人の移動」だが、沖縄の大学から留学する限りは「沖縄の問題をもう少し勉強してから来れば良かった」と反省している。
 先日、バランガイ(最小行政区)選挙があり、マニラに出稼ぎに来ている人たちが一斉に帰省した。8割という投票率が、フィリピン市民の社会に対する責任感を表している。選挙の日、タクシーの運転手が見せてくれた投票済みのしるしである「紫のインクに染まった指」が誇らしげで、まだ一度も投票をしたことのない私にはうらやましかった。


   
 雨が降り出し、学生たちへ傘サービス            タクシーの運転手の投票済み「紫のインク」に染まった指
をしてお小遣いをもらおうとしている子供達                                                                                  


フィリピン便り:台風ヨランダ

国際文化研究科 金 滋英

 台風ヨランダ(平成25年台風第30号)の威力は唖然とするほどの大きさだった。その被害を報じるニュース写真を見ながら、3年前の東日本大震災を思い出さずにはいられなかった人々も多かったと思う。
 マニラでは、風が強かったくらいで雨の量も大したことはなく、アパートの窓からは強風にもかかわらず無理矢理傘を広げながらレストランやバーに出入りする人たちが見えたくらいだ。大学も学部は全面休講になったが、大学院は通常通りの授業があり、クラスメートたちは「大学院生は不 死身だとでもいうのかね」と笑っていた。
 過去の大災害の例に漏れず、各国からの援助、有名人たちの寄付が報道された。救援活動への協力は、政治的事情も見え隠れした中、険悪な関係にある中国から病院船の派遣など医療援助があったというニュースが嬉しかった。ショッピングモール、電車の駅、飲食店などに寄付品を入れる箱や募金箱が設置されたが、お金の寄付は誰のポケットに入ってしまうか分からないので食品や物品の寄付の方が安心だ、という声も幾人かのフィリピン人から聞いた。
 デ・ラ・サール大学でもいくつもの有志グループが援助の活動を立ち上げた。食品や衣類が学生たちから持ち寄られ、ボランティアたちが仕訳をしたものが学内に積み上げられている。

以下に紹介するのは、一カ月が経過した段階で学内で見かけた活動の一部だ。







 経済学部の学部生有志による、80ペソの寄付につきキャンディーを一本あげます、という企画。







 彼らはボホール地区に限定した復興資金を集めるため、自分たちでデザインしたTシャツを300ペソで販売する他、額に入れた絵画や写真も販売するアーティスティックな企画を立ち上げていた。








  台風とは関係ないが、クリスマスシーズンなので近隣のホームレスの人々へ突撃プレゼント活動を企画した学生たちは、食べ物でも衣類でも何でもいいので、と寄付を集めている。
 
 

 名桜大学でも、このように気軽に学生の自発的な企画が小規模でも実現できるスペースと流れができればいいな、と思った。デ・ラ・サールの学生たちのこのような企画で気が付くのは、活動がほんの数日に限定されていたり、一日限りのものも多いことだ。「ちょっと思いついたから」という気軽さで、友達同士でダンボールの看板一つで企画を実現してみる。ビジネスマンを多く生み出しているデ・ラ・サール大学の大切な一面かもしれない。
 本プログラムで留学中の3人で会食をした際、東日本大震災や今回の台風被害における死傷者数と、年間3万人という日本での自殺者数を比較する話があり、注目も援助も得られずに消えていく命に改めて皆で思いを馳せたりもした。メディアで知る「困っている人々」への援助は明快で満足感も得られるが、同様に助けを必要とする身近な人への援助は諸々の事情と想いが絡み合い難しい。
 今回の台風の被害者ができるだけ早く日常生活を取り戻せることを祈ると同時に、東日本大震災の被害者たちが、放射能の問題も加わり経済的、身体的、そして精神的にも苦しい立場に置かれたままであることも考えている。


大学の世界展開力強化事業3: 「短期プログラム」派遣報告

国際文化研究科 山本 菜衣子

 平成25年9月16日(月)から30日(月)まで、文部科学省支援「大学の世界展開事業」の一環で行われた「アジアにおける平和と人間の安全保障短期プログラム」に、大阪大学・長崎大学・広島大学・名桜大学から総勢13人の大学院生が参加した。5年プログラムで行われている本プログラムの今年度の開催は、フィリピン共和国首都マニラに位置するデ・ラ・サール大学だった。
 2週間の滞在目的は、「アジアにおける平和と人間の安全保障」について講義を受け、多角的な視点から学ぶことだった。また、マンダリンマニラで行われた国際カンファレンスにも出席し、各国から集まった研究者の方々の発表を聞く機会に恵まれた。さらに、講義では「平和とは?」という素朴な疑問から、「今、私たちにできること」について、様々な方面から幅広く考えた。「戦争がないことが平和の定義なのか」「貧困をなくすことが平和へつながるのか」「JICAによる世界で行われている取り組みについて」なども討論した。
 看護師や保健師のバックグラウンドを多く持つ長崎大学の参加者が「自分たちにできることは、医療の現場で働くことで、現場の状況や問題点・改善点を伝える橋渡しの役目」だという意見に対しては、公共政策を学ぶ観点の方たちから「政策を立てるにあたって、誰をターゲットにどのように、よりよい法や制度を生み出せるかが自分たちの役目である」という意見が出た。さらにマニラ滞在中には、講義のみならず市内の美術館見学・現地学生と交流する機会もあった。
 最終日のプレゼンテーションでは、私自身のフィールドであるブラジルと、今回訪問したフィリピンを比較し、「日本におけるフィリピン人とブラジル人の出稼ぎ労働者の現状と課題―人間の安全保障」について発表し、充実した2週間を締めくくることができた。
 また、修士課程に在籍する大学院生という立場から共通の目標である「修士論文作成」に向かって悩み、もがく同志に出会うことができたのも、このプログラムを通して得られた貴重な出会いだった。
 この出会いは、さらに広がり、11月2日(土)から4日(月)まで本学で行われた日本国際保健医療学会では、このプログラムを通じて出会った長崎大学の国際開発健康研究科に所属する友人たちと再会した。プログラム終了後もこのように交流が続くことを心から嬉しく思う。そして、彼らの熱い姿勢と想いが今の私へ最高のエネルギーを注いでくれている。「空一面に広がる満天の星空の下で、近くにいるだけが友人ではない、人との出会いが人を豊かにしてくれる」と確信させてくれた再会だった。今後、国内外問わず世界をフィールドとして互いに切磋琢磨し、互いを高め合う存在であり続けた。

 
 ショートプログラムに参加したメンバーと数名の先生方                      マニラの博物館にて