公立大学法人名桜大学

 

住江淳司教授が博士の学位を取得しました




 筑波大学より、住江淳司教授(国際学群 国際文化教育研究学系)に、平成25年3月25日付、博士の学位が授与されました。同日、学位記授与式が筑波大学大学会館講堂で行われ、住江教授に学位記が授与されました。

 以下、論文題名と論文要旨をご紹介します。 
 

 筑波大学にて  


 

筑波大学大学院 人文社会科学研究科 歴史・人類学専攻

博士(文学)平成25年3月25日取得


カヌードスの乱―その全体像の構築

 本論文は、1896年から1897年にかけてブラジル北東部のバイーア州カヌードスで発生した所謂「カヌードスの乱」をとりあげ、その全体像を構築することを目指した。従来の研究では、カヌードスの指導者アントニオ・コンセリェイロをカトリック教会に反抗する狂信者、あるいは共和制に反対の立場をとる王党派とみなす見解が支配的であったが、それらはいずれも偏見に基づく一面的な理解であり、カヌードスの運動の全体像を描くには至っていない。本論文では、この運動を第一部においては宗教共同体としての側面から内在的にアプローチする一方、第二部においては民衆運動という側面から共同体をとりまく社会経済的及び政治的環境をふまえ外在的に考察した。それによってカヌードスの乱という事件の全体像を浮かび上がらせることが本論文の目的である。


 史料としては、従来用いられてきた文献の他に、カプチーノ派修道士の報告書、共同体の指導者が用いた説教集、医師でブラジル共和国連邦議会議員であったセザル・ザマによる共和国政府に対する請願書などを含む同時代的な記録を活用するとともに、リオ・デ・ジャネイロの陸軍省公文書館収蔵のカヌードス関係の資料をも参照した。

 ブラジルにおけるカヌードス研究の歴史はかなり長く、文献も豊富であるが、事件当時においては「反カトリック的狂信主義」あるいは「反共和国的王党主義」という偏見が支配的であり、また後世の歴史家たちは逆にこれを「千年王国的メシアニズム」とみなしたり、あるいは未完の「ブルジョア革命」、さらには挫折した「共産主義革命」とみなしたりするなど、その解釈において一致をみることはなかった。筆者はカヌードス共同体の原点を千年王国論に見る点では従来の説に共鳴するところもあるが、共同体をとりまく政治や経済の状況などにも目を配り、より多様な視点から詳細かつ包括的なカヌードス像を描き出し、オリジナルな結論に達した。


 本論部分を構成する六つの章では、宗主国ポルトガルにおけるカトリック信仰のあり方、事件の舞台となったブラジル・バイーア州の地理と経済、共同体の指導者コンセリェイロの人物像と共同体の組織、カトリック教会との関係、バイーア州の政治経済的状況、さらには中央政府との関係に至るまで詳細かつ包括的な考察を行った。こうして一見したところは、混沌きわまりない様相の中から、最終的には一つのカヌードス像を引き出そうとした。つまり、カヌードスを王党派の狂信者が起こした反乱であったとする伝統的な見方を、ここではカヌードスに対峙し、それを危険視した当時のブラジル支配者層の側の歪みの反映であったとみなし、その歪みの原因をあぶりだすことに成功した。こうした視点や手法は、「反逆者」やマイノリティーの研究には非常に有効であると思われる。

住江淳司(国際学群 国際文化教育研究学系 教授)
 

  
        学位記を手に比嘉理事長と瀬名波学長へ報告する住江教授