公立大学法人名桜大学

 

■本学教員著書紹介 菅野 敦志 著


台湾の国家と文化―「脱日本化」・「中国化」・「本土化」―』(勁草書房、2011年、500頁、5,460円)

台湾の言語と文字―「国語」・「方言」・「文字改革」―』(勁草書房、2012年、356頁、5,985円)

 

 1895年からの50年間に及ぶ日本の植民地統治を経た後、1945年の日本敗戦により「祖国」に復帰し、中華民国の一省として新たな歩みを始めることとなった台湾。国籍の転換のみならず、「中国人」として再度の言語・文化転換を迫られた台湾人が経験した「脱日本化」・「中国化」(祖国化)とはいかなるものであったのか。また、後に勃興をみせる台湾ナショナリズムを前に、冷戦下における模範国民の再生産を企図した政府の文化/言語政策は「本土化」(台湾化)の流れのなかでいかなる転換をみせていったのか。

文化政策篇『台湾の国家と文化』・言語政策篇『台湾の言語と文字』の両書は、本学国際学群国際文化教育学系講師の著者が早稲田大学大学院に提出した博士論文を基に、その後新たに発表した論稿を加え出版されたものである。従来、ややもすれば文化統制の抑圧性のみが強調される傾向にあった戒厳令下の国民党統治であるが、両書は豊富な一次史料に依拠しつつ、「脱日本化/中国化」から「本土化」の変遷と共に変容を遂げた戦後台湾の文化/言語政策史像に新たな視角を提起する。刊行に際しては、前者が早稲田大学台湾研究所若手研究者出版助成、後者が平成23年度日本学術振興会科学研究費補助金研究成果公開促進費(学術図書)を受けており、若手研究者によるアジア研究の新たな成果として位置づけられるものである。

1945年まで同じ日本の版図であった沖縄と台湾であるが、戦後、沖縄がアメリカ統治を余儀なくされたのに対し、台湾の住民は「同胞」でありながらも異なる歴史記憶を有する他者による支配を受けることとなった。沖縄と台湾の間に戦後再画定された国境線の双方で生じた変化を見たとき、われわれは東アジア戦後史に内在する固有性とその意味について改めて考えざるを得ない。