公立大学法人名桜大学

 

学位記授与報告(H23.3.27)


平成24年3月27日(火)、九州大学大学院人間環境学府より、博士号(教育学、甲257号)の学位認定と授与がありました。

 

論文題名沖縄の集落共同社会における教育文化的機能に関する研究

 

論文要旨

 近代学校の設立後、沖縄の集落(字)社会では、児童の就学率の維持・向上と修学策の振興を担う学事奨励会が成立した。この学事奨励会は、学校や集落の中で、他の教育諸団体と結びつきながら重層的に成立し、児童の出席率や成績の優劣を競い合わせながら、保護者や児童の関心を近代学校に向かわせた。また同時に、困窮家庭への学資援助などを図ることで、貧困を理由とした就学への障壁を取り除こうとした。一方、沖縄社会では、方言や風俗習慣を否定し、大和化(=日本化)を目的とする風俗改良運動がもち上がるが、この運動と軌を一にして、学事奨励会は、近代学校への就学及び修学策を展開したのである。このように、学事奨励会は、集落社会における教育的な基盤=教育力の土台として形成された。

戦後、米軍統治下の沖縄の厳しい教育文化環境の中で、いち早く学事奨励会は再生した。村の復興と連動して学事奨励会は始まるが、同会の所期の目的を超える、字民本位の自立的・自治的な地域教育実践が様々に展開されたのが、戦後沖縄における地域教育の特徴である。具体的に述べると、戦後再生された学事奨励会を手がかりにしながら、集落の子どもの実態を見据えた地域的な活動の展開が沖縄全域でみられた。例えば、米軍統治下の沖縄の集落社会では、防犯的な性格をもつ教育隣組が地域婦人会などの社会教育諸団体の支援を背景に急速に広がり、また就学前教育の条件整備が貧弱な中で、集落の中核的な機能をもつ字公民館に幼稚園を附設して、字の幼児教育・保育活動を繰り広げた。字公民館を拠点に活動を展開した文庫・図書活動は、青年会や子ども会、婦人会に支えられ、また子どもの学習支援を目的とする「学習会」の設立も見られるなど、字民の自発的・自主的な地域社会教育実践が展開された。

このように、沖縄の集落共同社会に注目した時、子どもに関わる様々な教育的機能が生まれ出てきたのであり、これこそが集落の教育力あるいは地域教育組織の機能の実態であった。しかも、これらの機能を支え、継承してきたのは、字民の自覚的・自治的な運動と組織的な取り組みであり、集落の教育や子育てに対しては第一義的に集落民が責任を負い、相互に支え助け合う精神風土が根底に流れていた。つまり、集落の中核的な役割を果たしている字公民館で、共同体意識を基底としながら自治的な意味で子どもの教育文化活動を担っていこうとする自発的な姿勢がみられたということである。親の義務としての(就学前を含む)教育を集落共同体組織の中で具体的な共同化の作業を通して実現していこうとするものであり、それが字公民館幼稚(児)園であったり、図書・文庫活動、教育隣組の活動であったりした。

集落の自主性・共同性は、地域の教育力や子育て機能の形成においてもみられ、集落共同体における子育ての習俗の中に教育的な営みが豊かに形成していたものと捉えることができる。これらのことから、戦後の集落社会における子育てに関わる様々な教育的な営みは、字民相互の扶助と共同体意識が根底にあって、これらを生み出し、支えてきたのである。

 

嘉納 英明(人間健康学部 スポーツ健康学科 教授 兼任 教員養成支援センター長)