公立大学法人名桜大学

 

教育・研究活動レポート:フレンチパラドックス ―不思議な現象―

 
フレンチパラドックス ―不思議な現象―

 赤ワインの主なポリフェノールはオリゴメトリックプロアントシアニジン(OPC:緑茶で有名なカテキンを更に複雑にした構造を持つ)と言い、素はといえばブドウに含まれていたものです。ブドウの場合、果実や皮よりも種の方に有用なOPCが沢山入っています。従って、生食やジュースあるいは白ワインではなく、果実も皮も種も一緒に醸造し、OPCがたっぷりとけ込んでいる赤ワインの方が健康にはいいのです。
因に、赤ワインと健康が結びつけられて今日に見られる世界的な赤ワインブームが起こったのは、「フランス人は動物性脂肪や乳脂肪などの多い脂っこい食事をとっているのに、心臓病やその他血管系疾患での死亡率がなぜか低い」という不思議な現象からでした(動物性脂肪の摂取量と虚血性心疾患による死亡率には正の相関関係があり、動物性脂肪の過剰摂取は、心臓に血液を送る冠動脈に動脈硬化を起こし、心筋梗塞や狭心症など所謂虚血性心疾患を引き起こす)。この不思議な現象は「フレンチパラドックス」といわれ、多くの科学者が頭を悩ませていました。
心臓病の原因である動脈硬化は、悪玉コレステロールと呼ばれるLDLが血管に沈着することによって引き起こされると一般的には知られています。しかし、本当はLDL自体が悪いのではなく、活性酸素により“酸化”してしまったLDLが動脈硬化の原因となるのです。ブドウの種子や赤ワインに豊富なOPCは、このLDLの酸化を強力に防ぐ働きがあり、これにより「フレンチパラドックス」の謎も解明されました。

世界でもっとも高貴といわれる
シャトーマルゴー

 また最近では、赤ワインと皮膚や血管の主成分であるコラーゲンとの関係がクローズアップされてきています。OPCは、血管や皮膚のコラーゲンに集まりやすいという性質があります。OPCはタンニンという物質に属していますが、このタンニンという物質はコラーゲンと吸着して弾力を保つため、古くから皮なめしなどに利用されてきました。それが最近になって、赤ワインに豊富に含まれるOPCが、皮膚の結合組織の成分であるコラーゲンやエラスチンに吸着し、コラーゲンを分解する酵素をブロックしたり、コラーゲンの合成能力を高めたりすることが分かってきたのです。コラーゲンの弾力を強めるのとコラーゲンの量を増やすという2点から、OPCには皮膚の弾力性を高めシワを作りにくくするという非常に優れた作用が期待できるのです。「赤ワインは女性の皆さんにとって究極の飲む美容液といったところでしょう」。このOPCの作用は、血管にも同様に働き、血管の弾力性を保つために優れた効果を発揮します。
さらにもう一つ、日焼けで黒くなりシミ、ソバカスができるのは主に紫外線によって発生した活性酸素(一重項酸素)の影響です。メラニン色素が作られる最初のスイッチは、主に一重項酸素によってONにされます。ですから、皮膚中の一重項酸素を押さえることがシミ、ソバカス対策の重点になってきます。OPCの抗酸化力は紫外線によって発生した一重項酸素をすみやかに消去する優れた力を持っています。また、メラノサイトを活性化させメラニン色素の増殖に関連するチロシナーゼの働きを阻害する作用を持ち、ダブルの効果でシミ、ソバカスをブロックする働きがあるのです。フランス人に色白美人が多い印象があるのは、赤ワインを沢山飲んでいるからであるという話も、最もであるとうなずけるでしょう!
赤ワインにはOPCだけではなく、アントシアニンや長寿遺伝子のSIRT1を活性化させるレスベラトロールという優れたポリフェノールも含まれており、これらのポリフェノールの相乗効果により老化防止や美容を始め、アトピー性皮膚炎、ガンなどのもととなる活性酸素による細胞の酸化などを防ぐ作用があります。また、抗酸化作用を促すだけではなく、食欲減退、不眠症、冷え性、脳貧血などにも有効とされています。
赤ワインには、生のブドウより約10倍のポリフェノールが含まれています。特にカベルネソービニヨン種やメルロー種のブドウでできた赤ワインが豊富にポリフェノールを含んでいます(何かしらよくわからない場合は、色が濃く、渋みが多いワインを飲むといいでしょう)実はリンゴの皮にも、リンゴポリフェノール(OPCと似た構造を持つ)が豊富に含まれていて、リンゴは皮ごと食べないと、とっても損することに・・・
でも、いくら美容や健康にいい赤ワインでも、飲み過ぎは元も子もありません。ワイングラスに1〜2杯程度で十分な効果があると言われています。皆さん、くれぐれも飲み過ぎには注意しましょう。

しかし、毛根にも作用し、髪の発育にも優れた効果が期待できることから、育毛成分にも使われているOPC、だがなぜかワイン醸造家には頭が薄い人が多いような気がする!これもフレンチパラドックスしかり・・・

参考文献
Rohdewald P.,(2002) A review of the French maritime pine bark extract (Pycnogenol), a herbal medication with a diverse clinical pharmacology. Int J Clin Pharmacol Ther. Apr;40(4):158-68.

 

高瀬 幸一人間健康学部スポーツ健康学科
准教授 高瀬 幸一
profile

島根県出身。 専門はバイオメカニクス、運動生理学。高齢者の筋機能に関する研究を行い、国際学会(ACSM)などで活躍する傍ら、地域の老人会で「ゆんたく講師」を務めるなど、幅広く活躍している。陸上競技部コーチ(中・長距離)。