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【スポ健 COLUMN】第17号『スポーツパーソンと読書(1)』

掲載日:2019年10月15日スポ健コラム

 幼き頃から10月になると、「スポーツの秋」、「読書の秋」というフレーズを幾度なく耳にしてきました。しかしながら、私が実践するのはスポーツのみであり、読書とは無縁の日々を送ってきました。本格的に本を読み出したのは、大学を卒業して企業に入社した後です。私のみならず、スポーツパーソンと読書の相性は良いとは言えません。本号と次号では、多くのメディアで活躍されている明治大学教授の齋藤孝氏による『読書する人だけがたどり着ける場所』を中心に、スポーツパーソンが読書をする意義について述べたいと思います。
 近年は書籍のみならず、雑誌の売り上げが年々落ち、少なくない出版社や書店が廃業に追い込まれています。最も大きな要因はインターネットであり、SNSやスマートフォンの普及は書籍・雑誌離れを加速させました。そのため、現代人は書籍・雑誌離れをしていますが、ネット上で文字を読んでいるため、活字離れはしていません。特に現在の大学生は私の世代の大学生より、活字を読んでいる印象を受けます。なぜなら、当時は私も含めて、書籍や雑誌のみならず、ネット上でもそれほど活字を読んでいない学生が少なくなかったためです。
 齋藤氏はネットで活字にふれるだけでは問題があると、以下のように指摘します。
・ネットで活字にふれることは読み手の「向かい方」に読書と大きな違いがあり、そこにあるコンテンツにじっくり向き合わずに短時間で次へ移行してしまう。
・面白いものを消費しているだけであり、せわしく情報にアクセスしているわりには、どこかフワフワとして身についていない。
ネットで文章を読む際は、私達は「読者」でなく、「消費者」であると齋藤氏は述べます。  
 先日、関西に足を運んだ際に、電車内での「読者」の少なさを目の当たりにしました。沖縄で生活を始めてから電車に乗る機会は格段に減ったこともあり、私の電車内でのイメージは沖縄に来る前の4~5年前によるところが大きいです。当時も電車内でスマートフォンを操作する人は増えてきていましたが、現在は「電車ではスマートフォン派」が圧倒的なマジョリティーであり、「電車では本派」はマイノリティーです。近年、電車内での「読者」は急激に減少しました。
 「読者」が減った今だからこそ、「読者」の人材としての価値は高まると私は考えます。モバイルマーケティングデータ研究所は2018年10月31日~11月1日の期間に、スマートフォンを所有する15歳~59歳の男女2,718人を対象に、スマートフォンの利用時間に関する調査を実施しました。結果として「2時間以上3時間未満」のカテゴリーが24.1%で最も多く、次いで「3時間以上4時間未満」が18.5%、「1時間以上2時間未満」が16.9%でした。4時間以上のカテゴリーを合計すると28.9%でした。15歳~59歳の4人に1人以上が、スマートフォンを4時間以上利用していることには驚かされます。一方で、全国大学生活協同組合連合会は2018年10~11月に、全国の国公立および私立大学の学部学生を対象に、1日の読書時間を調査しました。1日の読書時間が0分の割合は48.0%であり、120分以上の学生は7.2%でした。
 立命館アジア太平洋大学学長の出口治明氏は10月7日付の日本経済新聞の紙面において、面白い仕事が来たときに、毎晩本を読んでいる部下と毎晩飲みに行っている部下のどちらを選ぶのかを読者に問うています。まとまった知識を得られるのが本の強みであり、いろいろな知識を持っている人の方が、いい仕事に巡り合うチャンスが多くなると出口氏は指摘します。齋藤氏もネットやSNSの全盛の現代だからこそ、本と向き合う重要性を強調しています。
 次号では、AIの問題も絡めつつ、スポーツパーソンが読書をする意義について掘り下げていきます。

スポーツ健康学科 大峰 光博

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